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第13話 異世界での結婚話

Auteur: 青砥尭杜
last update Date de publication: 2025-02-03 19:35:24

「俺の結婚に関わる話、というか俺が結婚する前提で、もう話は進んでるってことですか?」

 カイトが率直に尋ねると、マジェスタは若干の間を置いてから答えた。

「いずれ分かることを隠すような愚は演じません。申し上げます。閣下には王族ないし名家、具体的には御三家いずれかの令嬢と結婚していただく運びで事は既に運んでおります」

「……それは、もう決定事項なんですか?」

 感情的に否定や驚きで反応することなく確認する問いに徹したカイトに対し、マジェスタはゆっくりとした首肯を返した。

「王配殿下の血縁であろう次の召喚に応じられた方は、すなわち聖魔道士であり王配殿下の直系。その方にはこの国で結婚し家庭を持って、ミズガルズの地に根を下ろしていただく……政治的な背景があることは否定できませんが、女王陛下と王配殿下も望んでおられる筋書きでございます」

「……そうですか」

「閣下は二十歳であられるとなれば、ことは重畳、適齢であられます」

 予期しなかった角度で最初に「閣下」と呼ばれた理由が効いてきたとカイトは感じた。

(転移した異世界でいきなり貴族ルート確定。しかも王配の直系ならマジェスタさんが言ってた「こうしゃく」は公爵ってことだろう……いきなり公爵になった異世界でハーレを築く、なんてエロゲーみたいな展開が許される雰囲気の世界じゃないってことは、もう分かってた。でも実際、自分が結婚するかもって状況になると……)

「俺がいた世界、日本の感覚じゃ二十歳はまだ早いんですが……ミズガルズでは適齢ですか?」

 カイトがありのままの感覚を明かしながら問いで返すと、マジェスタはすぐさま首肯した。

「はい。特に王侯貴族の御子息が婚約する年齢としては適齢です。ミズガルズ王国の法律では女性は十六歳、男性は十七歳が婚姻適齢であり、結婚が可能となります。昨今の王侯貴族にあっては、幼少のみぎりに婚約を済ませる事例は減少し、法律に沿った婚姻適齢の前後に婚約する例が増えております」

「……それで、先ほどのヴェルデ王女殿下が、俺の婚約者に決まったってことですか?」

 諦観に傾く感じを含んだカイトの言葉に、マジェスタは小さく首を横に振ってみせた。

「いえ。今はまだ候補者の一人です」

「……候補者ってことは、すぐに決められる訳ではないんですね。お互いに考える時間はある、と……ヴェルデ王女殿下は乗り気のようでしたが……」

「ヴェルデ王女殿下は、ダイキ卿に懐いておられましたので……その御子息が召喚されるのを強く望まれておりました。閣下を召喚する術式を構築したのもヴェルデ王女殿下です」

 マジェスタがするりと明かした意外な事実に、カイトは素直に驚きの反応をみせた。

「えっ? ヴェルデ王女殿下は魔道士ってことですか?」

「いえ、魔道士ではありません。ナーガに下賜された異なる世界の人間をこの世界に召喚する術式は、通常の魔法とは異なり魔力を必要としません。その代わりとして下賜されたセルリアン女王陛下の直系にあたる女性にしか構築できないのです。その上、その女性が術式を構築できるのは一生に一度きりとなっております」

 カイトは「妙に古風なファンタジーっぽい設定だな」と感じながら、次に湧いた疑問を口にした。

「一度きり、ですか……じゃあ、父さんを召喚したのは?」

「ヴェルデ王女殿下の父君タンドラ王太子殿下の妹君であられる、アジュール王女殿下が召喚なされました」

「女王陛下の直系で女性に限られ、しかも一度きり……異世界召喚はかなりの大事なんですね……」

 あらためて自分が置かれた状況の重さを感じたカイトが、ぼそりと漏らした感想をマジェスタは肯定した。

「左様です。今では聖人召喚の儀とも呼ばれ、国内外に公表される一大式典となっております」

「じゃあ、俺のことも……」

「正式に公表されます。国民への直接的な披露は、筆頭魔道士団への加入に際する魔道士としての叙任式典となりましょう」

「式典、ですか……」

 一つ一つと荷重が増やされていくような感触を覚えたカイトは、気が重くなる自分を抑えながら次の疑問を口にした。

「ヴェルデ王女殿下は王太子殿下の長女ということでしたが、そうなると俺とは、いとこに当たるんじゃないかと……」

「左様です。いとこに当たります」

 何ら不都合はないという口調でマジェスタが答えるのに触れて、カイトは異世界との違和感を強く感じた。

「いとこ同士の結婚は問題ないんですか?」

「こと王侯貴族にあっては、いとこ同士の結婚は珍しくありません。何ら問題となる点は無いかと存じます」

「そうですか……」

 異世界に来てしまった自分が置かれた立場は、特別というより特異なんだとカイトは強く感じたが、それを口に出すことはしなかった。

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